印西市市民参加条例(議案)

 北総台地の緩やかな地形からなる印西市は、三方を利根川、手賀沼、印旛沼に囲まれた豊かな自然環境に恵まれ、歴史と伝統に培われたまちです。

 また、この広大な台地には、大規模な都市開発が進み、更なる発展の可能性が秘められています。

 このように、自然、歴史、伝統、そして新しい都市機能を備えた多様性に富んだこのまちで、子どもからお年寄りまで、さまざまなかたちでこの地に関わる人々が、心豊かにいきいきと暮らしていくためには、一人ひとりの市民が、「わたしたちのまち」に主体的に関わっていくことが大切です。

 わたしたち市民と市は、互いに信頼し合い、市民の知恵と感覚を生かしたまちづくりを進めるため、ここに、この条例を制定します。

 (目的)

第1条 この条例は、市民が市の行政に関わるための基本的な事項を定め、市民参加を推進することにより、魅力と活力のある地域社会の発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 (1) 市民参加 市民と市が協働でまちづくりを行うために、市の施策立案等において、市民が自主的、主体的に行政活動に参加することをいう。

 (2) 協働 市民と市がそれぞれの役割を自覚し、自主的な意思に基づき、対等な立場で互いに協力及び連携することをいう。

 (3) 市民 市内に在住、在勤又は在学する個人及び市内に事務所又は事業所を有する法人その他の団体をいう。

 (4) 審議会等 地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき法律又は条例により設置された附属機関及び市の事務又は事業について市民の意見や専門的知識の反映及び公正の確保のために市民、学識経験者等を構成員として、要綱等により設置された機関をいう。

 (基本理念)

第3条 市民参加の機会は、全ての市民に平等に保障され、市民の参加の努力が生かされることにより、保持され拡大されるものである。

2 市民参加は、年齢、性別、居住地域等それぞれの置かれた立場を尊重し、市民の持つ豊かな社会経験、知識及び創造的な活動等の多様な視点を生かし推進されるものである。

3 市民と市は、市民参加の推進のため互いを尊重し、それぞれが自らの役割を果たし、協働によるまちづくりに努めるものとする。

 (市民参加における役割)

第4条 市民と市は、市民参加を推進するため、情報を共有し、信頼関係を築き、協力し合うことにより、それぞれが自らの役割を果たすよう努めるものとする。

2 市民は、市民参加によるまちづくりを推進するため、次に掲げる役割を担うものとする。

 (1) まちづくりの担い手であることを認識し、市民参加によるまちづくりの推進に努めること。

 (2) 自らの意思と行動に責任を持ち、積極的な市民参加に努めること。

 (3) 市民相互の自由な発言を尊重し、自主的かつ民主的な参加に努めること。

3 市は、市民参加によるまちづくりを推進するため、次に掲げる役割を担うものとする。

 (1) 市民自らがまちづくりについて考え行動することができるよう、早い段階から積極的な情報の提供を行い、市民との認識の共有に努めること。

 (2) 市民の意向をまちづくりに反映することができるよう、基本的な事項を定める意思形成段階からの適切な時期に市民参加を求めるとともに、公正な参加の機会の確保に努めること。

 (3) 市民参加の推進のため、市民への啓発に努め、市民の持つ知識や経験を蓄積し、生かすとともに、市の職員が市民参加の意義について理解を深め行動することができるよう、必要な方策を講ずること。

 (市民参加の対象)

第5条 市は、次に掲げる行政活動を行う場合は、市民参加を求めなければならない。

 (1) 市の基本的な事項を定める計画等の策定又は変更

 (2) 市の基本的な方針を定める条例の制定又は改廃

 (3) 市民の権利義務に関する条例の制定又は改廃

 (4) 市民の生活に大きな影響を及ぼす制度の導入又は改廃

 (5) 大規模な公共施設の設置に係る基本計画等の策定又は変更

2 市は、市民参加を推進するため、前項の規定にかかわらず、次に掲げる事項を市民参加の対象とするよう努めるものとする。

 (1) 市民の生活に身近な公共施設等の設置、改善及び運営

 (2) 市民と市が協働で地域の魅力や課題を発掘し、特色あるまちづくりを目的とした事業

 (3) その他市民参加を求めることが適当と認められる事項

3 市は、第1項の規定にかかわらず、緊急その他やむを得ない理由がある場合、政策的な判断を要しない場合、市税の賦課徴収その他金銭徴収に関する条例を制定又は改廃する場合(新税を導入する場合を除く。)は、次条第1項各号に掲げる全部又は一部の手続を行わないことができる。この場合において市は、市民参加を求めない理由を印西市市民参加推進委員会に報告するとともに、市民に公表するものとする。

 (市民参加の方法) 

第6条 前条の規定により市民参加を求める場合の市民参加手続の方法は、次の各号に掲げるとおりとする。ただし、法令等に特別の定めがある場合は、その手続きによる。

 (1) 市民意向調査手続

 (2) 市民説明会手続

 (3) 市民意見公募手続

 (4) 市民会議手続

 (5) 審議会等手続

2 市は、前項各号に規定する方法のうちから市民参加を求める場合は、第4条第3項第1号及び第2号の規定に掲げる役割を果たすよう、適切な方法により実施しなければならない。

3 市は、前条及び前2項の規定にかかわらず、市民の自発的な提案を市の施策等に反映させるための手続(以下「市民提案手続」という。)を定め、当該手続を受け付ける窓口を設置する。

4 市は、第1項及び前項に規定する手続のほか、市民の意見等を把握するため、郵便等による送付、電話、ファクシミリ、電子メール等による提案、質問等の受付又は直接的な対話等を積極的に用いるものとする。

5 市は、第1項本文及び第3項の規定により市民参加を求めたときは、会議等の開催記録又は提出された意見の内容及び検討結果を速やかに公表するものとする。ただし、印西市情報公開条例(平成12年条例第24号)に定める不開示情報に該当する事項は除く。

 (市民意向調査手続)

第7条 市は、重要な施策又は課題等について、市民の意向を知る必要があると認める場合は、市民意向調査を実施するものとする。

2 市は、市民意向調査手続を実施するときは、事前にその目的、内容、対象者等を公表しなければならない。

 (市民説明会手続)

第8条 市は、課題、問題点等の説明を通して複数の市民の意見等を収集する場合は、あらかじめ対象となる市民を定め、市民及び市の意見交換を目的とする集まり(以下「市民説明会」という。)を開催する。

2 市は、市民説明会の開催にあたっては、開催日時、開催場所、議題等を事前に公表しなければならない。

 (市民意見公募手続)

第9条 市は、市民意見公募手続(市の施策等を修正可能な段階で公表することにより、対象となる市民から意見等を募り、その上で意思決定を行う手続をいう。)を実施するときは、次に掲げる事項を事前に公表しなければならない。

 (1) 対象とする事案

 (2) 対象とする事案を作成した趣旨、目的及び関係資料

 (3) 意見等の提出方法、提出期間及び提出先

 (4) 意見等を提出することができる者

 (5) その他必要な事項

2 市は、意見等の提出方法について、多様な方法を保障しなければならない。

3 意見等の提出期間は、公表の日から起算して30日以上とする。ただし、緊急その他やむを得ない理由がある場合は、その理由を公表し、提出期間を30日未満とすることができる。

 (市民会議手続)

第10条 市は、課題、問題点等に対して複数の市民との意見交換、意見形成等を図る場合は、あらかじめ対象となる市民を定め、市民及び市又は市民同士の自由な議論により一定の方向性を見出すことを目的とする集まり(以下「市民会議」という。)を設置する。

2 市は、市民会議の開催にあたっては、開催日時、開催場所、議題等を事前に公表しなければならない。

 (審議会等手続)

第11条 市は、市の事務又は事業について、市民の意見や専門的知識の反映及び公正の確保のために、市民、学識経験者等の意見を聴く場合は、審議会等を設置する。

2 市は、審議会等の設置及び運営において、委員を選任しようとする場合は、できる限り公募で行うものとする。

3 市は、審議会等の構成員について、男女の比率、他の審議会等との重複、在任期間等を勘案し、幅広い人材を登用するよう努めるものとする。

4 審議会等の会議等は、原則として公開とする。ただし、法律、条例、要綱等の規定により非公開とされる場合又は公開することにより公正かつ円滑な議事運営に著しい支障が生ずるおそれがある場合は、この限りでない。

5 市は、審議会等の会議を開催するときは、会議名、開催日時、開催場所、議題等その他必要な事項を事前に公表しなければならない。

 (市民提案手続)

第12条 市民提案手続における提案は、代表者である市民が、市内に住所を有する10人以上の連署をもって、市に行うものとする。

2 市は、市民提案手続による提案を受けたときは、速やかに担当部署を定め対応を図るものとし、必要に応じ印西市市民参加推進委員会の意見を聴くものとする。

 (住民投票手続)

第13条 市長は、第7条から前条までに規定する手続のほか行政運営上特に重要な事項で、市民の意思を直接問う必要があると認める場合は、住民投票を実施することができる。

2 前項の場合において、投票に付すべき事項、投票の期日、投票資格者、投票の方法、成立要件、結果の取扱いその他住民投票の実施に関し必要な事項については、別に条例で定める。

 (委員会の設置)

第14条 この条例に基づく市民参加を適正に運用し、市民参加によるまちづくりを推進するため、地方自治法第138条の4第3項の規定に基づき、印西市市民参加推進委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

2 委員会は、次に掲げる事項について調査及び審議する。

(1) この条例の運用に関する事項

(2) この条例及び規則の見直しに関する事項

(3) 市民提案手続により提出された提案の取扱いに関する事項

(4) その他市民参加の推進に関する事項

3 委員会は、委員15人以内で組織し、次に掲げる者のうちから市長が委嘱又は任命する。

(1) 公募により選出された市民

(2) 学識経験者

(3) その他市長が必要と認めた者

4 委員の任期は2年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 委員会は、複数の市民との意見交換、意見形成等を図るため、市民参加推進市民会議を設置することができる。

 (市民参加の実施状況の公表)

第15条 市長は、毎年度の市民参加の実施状況を取りまとめ、委員会の意見書を付して、これを公表する。

 (条例の見直し)

第16条 市長は、社会情勢及び市民参加の状況に応じて、この条例の見直しを行うものとする。

 (委任)

第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

   附 則

 (施行期日)

1 この条例は、平成20年4月1日から施行する。

 (経過措置)

2 この条例の施行の際、既に着手されている対象事項であって、正当な理由により第6条第1項に定める市民参加手続により市民参加を求めることが困難なものについては、この条例の規定を適用しない。